【色彩とタロット】青×女教皇

〜静謐なる知性と霊性の色をまとう者〜
こんにちは、タロッティストの小鳥遊です。
タロットの大アルカナの中でも、ひときわ静かに、しかし強く目を引く存在——それが「女教皇」のカードです。
その佇まいを象徴するように、彼女は深い青のローブを身にまとい、内なる世界へと私たちを誘います。
今回の【色彩とタロット】シリーズでは、「青」という色彩がこのカードにおいてどのような意味を持ち、そしてどのようにリーディングに活かせるのかを、じっくりとひもといていきます。

青という色がもつ霊性と静けさの象徴
女教皇の深い青の衣を見て、あなたは何を感じますか?
それは、海の底に静かに広がる世界かもしれないし、雲ひとつない夜空かもしれません。
「青」は、ただの色ではありません。
タロットにおいて、それは“言葉にならない叡智”の入り口です。
赤が情熱や行動力を象徴するのに対し、青はその対極にあるような性質を持っています。
静けさ、冷静さ、知性、そして精神性——。
ユング派の深層心理学では、「青」は“心のくつろぎ”や“世事に煩わされない泰然自若とした在り方”と深く結びついているとされています。
言い換えれば、外の世界の喧騒から一歩引き、自分の内側に深く入っていくための色。まさに女教皇のあり方そのものです。
神話や宗教の世界でも、「青」は天と神を象徴する色として描かれてきました。
古代エジプトでは空の色としてアメン神と結びつき、キリスト教では聖母マリアのマントの色として「慈愛」「霊性」「真理」を示してきました。
フランスの象徴学者ポルタルは、「青は神の真理と永遠を象徴する色であり、真理は永遠であるから青もまた不滅の色なのだ」と語っています。
また、青は水・空・水晶・ダイヤモンドといった透明な存在の象徴でもあります。
そこには境界がなく、光と影が共存し、見る者の意識をゆっくりと沈めてくれるのです。
青は、“感情の奥にある静かな真実”にアクセスするための色。
一見、はっきりした答えをくれないように見えて、実はもっとも誠実に、本質へと導いてくれる色なのかもしれません。
女教皇の図像における「青」の位置と意味
タロットカードの女教皇において、もっとも目を引くのが、彼女がまとう深い青のローブです。
それは、夜明け前の空のように静かで、海の底のように深く、そして何よりも近づきがたい神秘性をたたえています。
この青は、「内なる霊性を守るヴェール」として機能しています。
外界の騒がしさを遮断し、彼女の知や感受性を純化するように——彼女は青の中に、静かに座っているのです。
また、背後には海の水面がわずかに見えています。
これは潜在意識や命の源を表しながらも、柱とヴェールに隠れるように描かれており、女教皇が感情を抑え、霊的理性を重視していることを示しています。
足元に描かれた三日月もまた、青と密接な象徴です。月は無意識、直感、女性性の象徴であり、青はその神秘をより深く引き立てる色。
青と白の対比(青の衣と白いヴェール)は、霊性と純粋性の融合を象徴しており、聖母マリアの図像とも共鳴します。
正義や星も青をまといますが、女教皇の青はもっとも内に沈んだ静寂、語らぬ叡智を宿しています。
それは理解されるための色ではなく、「見つめる者の心が澄んだときにだけ、開かれる扉」なのです。青が示す霊的知性・無意識・沈黙
女教皇の青は、“わかる”のではなく、“感じる”ための色です。
それは論理ではなく、感覚で受け取るための空間をつくり出します。
この色は、深い水に潜ったような感覚を私たちにもたらします。音はなく、視界はおぼろげで、思考は静まっていく。
その静けさの中に、“確信”が浮かび上がることがあるのです。
霊的な知性とは、外側からの情報ではなく、内側から湧き上がる「腑に落ちる感覚」。
女教皇の青は、その静かな真理と共鳴する空間を用意してくれます。
タロットを読むとき、言葉にしようとするほど遠ざかってしまうような感覚を覚えることがあります。
でもそれこそが、女教皇の青が開く“沈黙の扉”。
語らずとも、そばに在るだけで導かれていく感覚。それは、非常に神聖な時間です。
女教皇×青がもたらす占断のヒント
恋愛相談では、相手の気持ちが見えづらい時にこのカードが出ることがあります。
それは、相手がまだ言葉にできない感情を抱いているというサインかもしれません。
青は「信じて待つ」ことの象徴でもあります。
人間関係では、表には出ていないけれど、相手が静かに配慮してくれている可能性。
青は適切な距離感と誠実さを表す色です。焦って近づくより、見守る姿勢が鍵になります。
未来への不安に関しては、「今は見えないことが守りになっている」という暗示も。
女教皇は、知りすぎることで傷つくことから私たちを守る存在でもあるのです。
リーディングにおいて、女教皇が示す「語らぬ青」は、“答えを急がない強さ”の象徴。
そして、静けさのなかにこそ「最も自分らしい答え」が浮かび上がってくることを、私たちに思い出させてくれます。
沈黙もまた、ひとつの答え
タロットにおいて、“答えが出ない”という経験は、避けたいもののように思えるかもしれません。
でも、女教皇と青のコンビネーションは、そんな私たちにこう語りかけているようです。
「沈黙もまた、ひとつの答えです。
答えを急がずに、いま感じている“気づきの前の静けさ”を大切にしてみてください。」
女教皇の青は、問いをすべて明かしてくれるわけではありません。
けれど、あなたの心がそれを受け取る準備ができたとき、
それは必ず“わかる”という形ではなく、“腑に落ちる”という感覚で訪れてくれるでしょう。
静かに波打つ夜の海のように、女教皇は今日も青をまとい、
あなたの中にある真実が語り出すのを、そっと待っています。
記事)小鳥遊
参考文献
『世界シンボル辞典』ハンス・ビーダーマン著
『タロット象徴辞典』井上教子著
『タロットの歴史』井上教子著
『シークレット・オブ・ザ・タロット』マーカス・カッツ/タリ・グッドウィン著 他
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