【タロットと象徴|Vol.8】正義の天秤が量るもの ― 剣と秤に宿る真のバランスとは

剣と秤に宿る真のバランスとは

こんにちは、タロッティストの小鳥遊です。

日々の暮らしや人間関係のなかで、「自分は偏っていないか」「何かを公平に扱えているか」と悩むことはありませんか?
そんなとき、私たちに静かに問いかけてくれるのが「天秤」のシンボルです。

天秤は、タロットにおいても重要な象徴の一つ。
とりわけ大アルカナ「正義」においてはそのモチーフが明確に描かれ、私たちに「公平」「真理」「判断」の意味を深く教えてくれます。タロットの中でもとりわけ冷静で峻厳、そして静かな迫力をもって登場します。青き剣と天秤を手にした人物は、私情を挟まず、ただ「正しさ」を見極めようとする姿勢そのもの。そこに描かれるのは感情ではなく、理知の力によって均衡を保ち続けようとする、人間の精神のひとつの理想像です。

天秤モチーフのカードたち

正義(Ⅺ)

剣と天秤 ― その手に握る二つの象徴

右手の剣は、真っ直ぐに上を向きます。これは単なる裁断の道具ではありません。風の象徴、そして言語・理性・知性を象徴するものとして、タロットにおける「剣」は極めて重要な意味を持ちます。
ウェイト版ではこの剣が青く染められている点が特筆されるべきでしょう。青は天界、霊性、あるいは「神の領域」に属する色。つまりこの剣は、人間の感情や意図を超えた“聖なる決断”の象徴でもあるのです。

左手に持たれる天秤は、二つの対象を「等しく測る」文明の道具。天秤の片方に心、もう片方に真理を乗せたとしたら、あなたの持つ信念は、果たしてその天秤を釣り合わせることができるでしょうか。

この天秤は、大アルカナ「正義」だけでなく、「ペンタクルの6」にも、「ソードの2」にも登場しますが、その意味するところはカードによって異なります。
「正義」では、法の支配のもとでの均衡を示し、それが崩れれば「不正」や「不和」の兆しとなるのです。

神の前での公平さ ― マアト神と羽の天秤

古代エジプトの「死者の書」では、死者の魂は、女神マアトの羽とともに天秤にかけられ、善なる者は天国へ、悪しき者は即座に地獄へと堕ちるとされました。「正義」のカードもまた、そのような絶対的な「裁き」の領域を描いているのです。

ここで思い出されるのが、ソードの2に描かれた「目隠しをした女性」。彼女は視界を閉じたまま、バランスを取り、重大な決断の直前にいます。けれど「正義」の人物は目を開けています。これは「見ることを恐れず、向き合い、裁く」という意志の表明です。目を逸らさず、現実を直視する勇気がここには描かれています。

実占での「正義」の読み解き ― 冷静な一刀を持て

このカードが実際のリーディングで現れるとき、それは単に「法律が関係します」では済まされません。重要なのは、その背後にあるメッセージです。

  • 物事を感情ではなく、理性で判断せよ
  • 事実を正確に見極めよ
  • あなたの秤は本当に釣り合っているかを点検せよ

たとえば恋愛相談において「正義」が出た場合、それは「情に流されるな」という冷静な警告かもしれませんし、「相手との関係が対等か」を問いかけていることもあるでしょう。ビジネスの場面では、「契約内容」「役割分担」などの実務的な要素に焦点が当たります。

ここで注意したいのが、“剣”の使い方です。剣は武器でもあり、言葉でもあります。真実を語ろうとするがあまり、人を斬りつけてしまうこともあります。「正しいことほど柔らかく伝えるべき」という知恵もまた、「正義」のカードに内包されているのです。

「正義」は冷たくない ― 魂に宿る信義の光

世の中には、「正しさが人を傷つける」場面がいくつもあります。けれども、「正義」は冷たさの象徴ではありません。
むしろそこにあるのは、「誰もが平等に尊重されるべきである」という、魂のレベルにおける誠実な理想です。あなたが誰かを断ち切らねばならないとしても、それはその人の人格を否定することではない。あなたの秤が、その行為を釣り合わせているかぎり、「正義」の女神は静かに微笑んでくれるでしょう。

ソード(2)

天秤の緊張、静寂のなかに ― 『ソードの2』という試練

一見して「正義」のカードと構図の共通点が目を引くのが、小アルカナの「ソードの2」です。
目隠しをした人物が、両腕を大きく広げて2本の剣を持ち、座っている。
その姿は、まさに「見えない天秤」を両腕に担っているかのようです。

このカードに描かれた女性は、目を閉ざしながらも、揺らぐことのないバランスを保ち続けています。
見えていないのに支えている ― それは、外側の世界ではなく、内なる判断軸によって均衡を取っているということ。

ウェイトはこのカードについて、「服従を強いられている状態と、それに耐える精神」と語っています。
すなわち、見えていない状況においても、自己の中に秤を持ち、静かに耐える力を表すのです。

正義の外なる秤 vs ソードの2の内なる秤

「正義」は社会的な法や倫理のもと、外からの視線や秩序による裁きを象徴していました。
一方この「ソードの2」では、判断は外から与えられるのではなく、内面において起こる選択・均衡・葛藤との静かな対話です。

・どちらかを選ぶことができない
・状況が見えない
・決断すればどちらかを傷つけてしまうかもしれない

そうした苦悩の中で、それでも人は決断を迫られます。
そのとき必要なのは、感情や恐れに流されず、沈黙の中で自分の中の天秤がどちらに傾くかを見つめること

天秤モチーフとしての位置づけ

このカードには明確な天秤は描かれていません。
ですが、「手で支えた2本の剣」そのものが天秤の皿であり、自分自身がその中心軸であるという比喩的な読みが成り立ちます。

・“目隠しの正義”の象徴(テミス)
・月と海=感情と無意識の波に囲まれている
・冷静さの中に潜む張りつめた緊張感

これらは、外的秩序の「正義」とのバランスを取りつつ、
個人の倫理観・精神的な中立性を問う構図となっています。

ペンタクル(6)

測る心、与える技

タロットにおける天秤モチーフは、「正義」や「ソードの2」のような思考・判断の文脈だけでなく、“与える”ことにまつわる倫理とバランスを象徴するカードにも登場します。
その代表格が、「ペンタクルの6」です。

与える者と受け取る者――不均衡のなかの公正

このカードに描かれているのは、富を手にした人物が、天秤を片手に持ちながら、貧しい人々に金貨を分け与えている場面です。
この人物は施しをする聖人でも、感情的な慈善家でもありません。

彼が天秤を持っているという事実は、この施しが単なる「気分」や「同情」ではなく、
必要性と分量を冷静に見極めた“公正な分配”であることを意味しています。

天秤はここでも語る:「誰に、どれだけ、どう渡すか」

この天秤は、もはや「正義の剣」と対になる象徴ではなく、
現実的なリソースの使い方――金銭、時間、労力、愛情――の分配を象徴しています。

ここで問われるのは、「どれだけ持っているか」ではなく、「それを誰に、どのように、どれくらい与えるべきか」という、現実的でシビアな選択。

たとえばビジネスであれば、報酬や価格設定に関するフェアネス。
人間関係であれば、与える愛情と求める見返りの釣り合い。
家庭では、家族内の役割の不均衡と調整…。

いずれも、このカードが象徴する「現実のなかの天秤」が関わってきます。

「正義」との対比 ― 法 vs 慈善の秤
  • 「正義」が法律や原理原則にもとづいた裁きの秤であるのに対し、
  • 「ペンタクルの6」は人間関係や社会的実践における分配の秤です。

どちらも天秤を象徴としながら、ひとつは普遍的な正しさを計る尺度であり、もうひとつは状況に応じた適切さを探る手段です。

このことから、「ペンタクルの6」はタロットの中で唯一、「与えることに責任と判断が伴う」という現実的な倫理を問いかけるカードとも言えます。

天秤の三様 ― 裁く・黙する・与える

これまで見てきた「正義」「ソードの2」「ペンタクルの6」は、いずれも天秤に関連していますが、
象徴するのはそれぞれ異なる次元のバランスです:

カード天秤の象徴するもの中心となる問い
正義(大アルカナ)裁き、公正、道徳、秩序「これは正しいか?」
ソードの2沈黙、均衡、内面的な判断「私はどうすべきか?」
ペンタクルの6物質的分配、実践的バランス「今、誰に、どれだけ与えるべきか?」

このようにして、タロットにおける「天秤」という象徴は、目に見える公正だけでなく、見えない判断、現実的な分配にも通じているのです。

天秤が語る、見えないバランスの物語

タロットにおける「天秤」は、単なる図像のひとつではありません。
それは常に、「目には見えない均衡」を象徴し、わたしたちに問いを投げかける存在です。

「正義」では、それは普遍的な秩序と真理のために振るわれる裁きの象徴として、「ソードの2」では、内なる葛藤のなかで沈黙を守る勇気として、そして「ペンタクルの6」では、現実世界の中で“与える”という選択をどう行うかという知恵として、それぞれの文脈で天秤が登場しました。

この3枚に共通するのは、「片方に重みが偏ることで、全体が揺らぎはじめる」という構造です。

  • 感情だけで裁けば、正義は失われる。
  • 片方の剣だけに力を込めれば、均衡は崩れる。
  • 与える手が独善的であれば、関係性はゆがんでいく。

だからこそ、天秤を見つめることは、自分の中心にある「判断軸」を見つめることに他なりません。

タロットと天秤 ― わたしを測る、問いかけの道具

天秤は、わたしたちが「世界をどう見るか」ではなく、「自分自身をどう測るか」を問う道具でもあります。

✔️ 感情と理性は釣り合っているか
✔️ 与えることと求めることのバランスはどうか
✔️ 正しさと優しさの間で、どちらを選ぼうとしているか

タロットに描かれた小さな天秤たちは、そんな問いを静かに浮かび上がらせてくれるのです。

あなたの中にある天秤へ

もしかしたら今、あなた自身の中でも、何かを「秤にかける」ような選択が迫られているかもしれません。

そんなときは、ぜひ今回ご紹介した3枚のカードを並べてみてください。

それはきっと、目の前の問題を「公平に裁く」のではなく、自分の心の深いところで、“納得できる答え”を見つけ出すための、ささやかな儀式となるでしょう。

記事)小鳥遊

参考文献
『世界シンボル辞典』ハンス・ビーダーマン著
『タロット象徴辞典』井上教子著

『タロットの歴史』井上教子著
『シークレット・オブ・ザ・タロット』マーカス・カッツ/タリ・グッドウィン著 他    

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