タロットに隠された『鍵』の象徴とは? 法王・隠者・女教皇・月・審判に潜む扉を開くメッセージ

ウェイト・スミス版タロットにおける『鍵』

こんにちは、タロッティストの小鳥遊です。

今回のテーマは「鍵」。

あなたは最近、「鍵」という言葉に引っかかるような体験をしたことはありませんか?
たとえば、偶然目にした看板に描かれていた鍵のマーク、ふと耳に入ってきた「鍵を握る」というフレーズ……。

占術の世界では、こうした「象徴」は無視できないサインです。
今回は、タロットに隠された『鍵』の象徴に注目し、5枚の大アルカナ──法王・隠者・女教皇・月・審判──に秘められた「鍵の物語」を読み解いていきます。

あなたの無意識の扉を開ける“鍵”は、案外この中にあるのかもしれません。

● 鍵の象徴とは?

鍵とは、開ける道具であり、同時に閉ざす道具でもあります。
何かを「開く」ためには、それにふさわしい鍵を手にしないといけませんね。
これは、単なる物理的な道具にとどまらず、象徴としての意味合いが非常に深いものなのです。

『世界シンボル辞典』によれば、鍵は「解き放つ力とつなぎとめる力」の象徴。
つまり、開放と制御、始まりと終わり、出発と留まり、あらゆる相反するものを結ぶ媒体であるということです。

たとえばキリスト教では、イエスが使徒ペトロに「天国の鍵」を授けたという逸話があります。
これは、「天国の門を開く権限=教導権(教会の最高権限)」を託されたという意味。
この鍵は、単なる道具ではなく、精神的な通路を開く象徴そのものなのです。

また、紋章学の中では、鍵は忠誠や信頼の証であり、都市が征服者に「都市の鍵」を渡す行為は、支配権を譲渡する象徴でした。
つまり「鍵を渡す」とは、主導権や権威を委ねる行為なのです。

さらに、恋人の「心を開く鍵」という言葉にもあるように、鍵は人の心に秘められたものへとアクセスする道具でもあります。
つまり鍵は、「アクセスの手段」であり、「解釈のヒント」であり、そして時に「あなた自身がまだ開けていない人生の扉」を暗示しているのです。

鍵はまた、聖なるものと俗なるものの境界線を超えるための媒介でもあります。
古代ローマでは、1年の扉を開く神「ヤヌス」に鍵が捧げられ、ドイツの伝統では、新婦が新居に入るときに鍵束を渡されることで家庭内の統治権を得るという習慣もありました。

さらに、鍵は「言葉」の象徴にもなります。
舌が「鍵のようなもの」とされるように、言葉で心を開いたり閉じたりすることがあるのです。
つまり、「発言」や「沈黙」そのものが、ある意味で“鍵”の働きをしているという考え方もできます。

こうして見てくると、鍵の象徴は「物理的・社会的・精神的」すべての扉を開く力を内包しています。
では、タロットの中で“鍵”の象徴は、どのように表現されているのでしょうか?

● 鍵の象徴を持つカードたち

法王(V)「伝統・教義・許可の鍵」

聖ペテロの鍵、神との仲介者、儀式的通過

法王のカードに描かれる人物は、天と地を結ぶ宗教的な橋渡し役であり、「神の意志を伝える存在」としての象徴性を持っています。彼が手にする三重冠と錫杖は、天界・地上・冥界の三界にまたがる力を象徴し、彼の足元にひれ伏す信者たちは、知識の扉を開くためにその“鍵”を求めています。

法王の持つ鍵は、単なる教義の象徴にとどまりません。ここには「許可」「認可」という意味合いが強く宿っているのです。

人生の分岐点において、「誰かの許し」や「社会的な承認」を求めるとき、私たちは“鍵を持つ存在”にその判断をゆだねようとします。法王はまさに、その“認可の扉”を開ける存在として現れるのです。

鑑定では、「結婚してもよいでしょうか?」「新しい仕事を始めても大丈夫ですか?」といった“お墨付き”を求める相談内容に、法王のカードが現れることがあります。そのときは、「このカードが出たということは、あなたの中にすでに“正しい選択”がある。その選択に祝福を与えるタイミングが来ているのです」といった感じでしょうか。

法王の“鍵”とは、伝統と制度に裏打ちされた安心感と信頼を象徴するもの。自らの判断に確信が持てないときに、背中を押してくれる“鍵”なのです。

本題とは関係ありませんが、ブログでは「教皇」と記載しましたが、やはり「法王」のほうが馴染みが深いですね。

隠者(IX)「内なる探求の鍵・知恵の灯」

ランタンの中の六芒星=内的啓示の導き

隠者のカードには、ランタンを掲げてひとり山道を歩く老賢者が描かれています。その姿は、外界の喧騒から離れ、静かに真実を求める魂の旅人。

彼の掲げるランタンの中には、六芒星が輝いています。これは「知恵の光」であり、「内なる鍵」とも言えるもの。

隠者が持つ“鍵”は、他者に開けてもらう扉ではなく、自分自身の深層へと至る鍵です。世の中の喧騒や常識から距離をとり、自分の声を聞き取るための時間を持つこと、、、それこそが、このカードが示す“鍵を開ける行為”なのかなって思います。

ある鑑定では、「本当の自分がわからなくなった」という方に対してこのカードが出ました。これって結構多い悩みだったりします。そのときは、「いま、外の世界で答えを探すより、自分の内面に光を灯すときでは?」と。

隠者の“鍵”は、即答ではなく熟成。自問と熟考によってはじめて開く、時間と誠実さの鍵なのだと思います。

女教皇(II)「沈黙と知の扉を開ける鍵」

スクロールと柱=神秘の入り口の番人

女教皇のカードに描かれる女性は、白と黒の二本の柱のあいだに静かに座し、トーラ(律法書)の巻物を抱え、足元には三日月が描かれています。

彼女が司るのは「秘められた知識」と「直感の領域」。その口は閉ざされ、知恵を語ることよりも“見つめること・感じ取ること”に重きが置かれています。

女教皇の“鍵”は、声にならない声を聴くためのもの──つまり「沈黙の中にある真実」を読み取る力だといえます。

鑑定では、たとえば「相手の気持ちがわからない」といった相談に対して女教皇が現れることがあります。っていうか結構あります。そのときは、「今は言葉よりも、“空気”や“沈黙”が語っていることに耳を澄ませて」という感じかな。なんでもかんでも言葉にできることばかりじゃないってところでしょうか。

また、このカードが出たとき、無理に事実を明らかにしようとするのではなく、少し距離を置くことで答えがやってくることもありますよ。

女教皇の“鍵”は、感情に流されない冷静さと、表層を超えた霊的な知覚力。目に見えない扉を開くには、沈黙の奥にある叡智にアクセスすることが求められるのです。

月(XVIII)――「無意識世界の門をくぐる鍵」

塔と塔の間の道、恐れを越えるための鍵

月のカードは、夜の景色の中に三日月、吠える犬と狼、そして水辺から這い出るザリガニという不思議な構図が描かれています。

このカードが象徴するのは、「無意識」「幻想」「錯覚」といった目に見えない心の領域。
月は太陽とは違い、自ら光を発することはありません。つまりこのカードにおける“鍵”とは、明確な答えではなく、曖昧な光の中に真実を見いだす力なのです。

鑑定で、「どうしても原因がわからない不安がある」という相談者に、ズバリこのカードが出たことが。そのときは、「その不安には、まだあなた自身が気づいていない“無意識の声”が関わっています。夢や直感、体の感覚にも目を向けてみてください」とかとか。みんな実際、不安で、その多くは見ないふりしてきたものだったり、本当は直感としてはこうだとわかっていても、いろんな理由をつけては無理に蓋をしていることだったりしてそれが不安という形になってたりするような、、、ね。

月のカードに出てくる道は、明るい部分から徐々に闇へと続いています。これは、安心と不安、理性と本能、意識と無意識を行き来する「変容のプロセス」を表しています。

このカードの“鍵”は、心の奥深くにある「まだ言葉になっていない何か」を受け入れること。ザリガニのように水の中から浮かび上がる“本能的な気配”に目を凝らし、幻想を恐れず、未知の領域に踏み込む勇気こそが、この扉を開ける鍵なのかなと思うのです。

審判(XX)「再生・目覚めの扉を開く鍵」

天使のラッパ=復活の合図(鍵の象徴)

審判のカードは、天上から響きわたるラッパの音と、それに応じて甦る人々の姿が描かれています。ここには、単なる「復活」ではなく、意識の目覚め、魂の再生といった深いテーマが込められています。

ウェイト博士によれば、このラッパの音は「心の中の内なる耳でのみ聞こえる」とされており、つまりそれは外からの命令ではなく、内面の覚醒、つまりあなた自身の中にある“目覚めの鍵”によって開かれる扉なのでしょう。

棺から立ち上がる人々は皆、両手を広げ、空を仰いでいますね。
そこに描かれた姿は、何かに導かれ、魂が高次の次元に向かっていく姿そのもの。

このカードは、特定の宗教的信仰を象徴するものではなく、誰もが「あるべき自分」に立ち返り、自らの魂と再会する瞬間を描いているんじゃないかなって思います。

鑑定では、長年の悩みや停滞が終わり、新たな視点を得る「目覚め」の予兆として出てくることが多い感じです。
クライアントが「これまでの人生の選択を肯定したい」とか感じているとき、このカードが現れると、結果としてどうであれ、案外自分ではもうすでに納得がいってるという感じがします。

審判は、苦しみの果てにこそ見える光があることを教えてくれるカードともいえますね。
魂の旅において、あなた自身が「本当の自分」を思い出すための“鍵”なのかな。

● 実占における「鍵」の視点

実際のリーディングにおいて「鍵」という象徴が浮かび上がる場面は少なくありません。
たとえば、「どうしても解決しない問題」「同じパターンを繰り返してしまう悩み」があるとき、それはまさに、まだ開いていない“扉”があるというサインです。

鍵の象徴を読むということは、「その人が本当に必要としている変化はどこにあるのか?」という視点を持つことでもあります。

タロットの中に鍵が明示的に描かれていなくても、その役割を持つカードはあります。
法王は明示されているけれど、外部からの導きや教え。
女教皇ならば、沈黙の中の叡智。
月ならば、内なる不安に触れること自体が“通過儀礼”になります。

たとえば、「人間関係のトラブルで退職するべきか」を問うリーディングで、隠者のカード出たら。
「あなたの中に“本当はどうしたいのか”という答えがもうあります。その答えに静かに耳を澄ませる時間が、今の“鍵”なんです」とかとか。

また、審判のカードが出たときは、「過去の後悔から解放されるときです。あなた自身が、次の扉を開いていいんですよ」なんて励ましだったりね。

“鍵”とは、行動の前に訪れるいわば「意識の変化」の象徴なのです。
その人が何に対して「扉を閉ざしていたのか」、そして「今、どんな扉を開けようとしているのか」。

そういった視点を持ってカードと向き合うことで、光がそこにみえてくるのかもしれません。

● 鍵を握るのは、あなた

私たちは日々、無数の「鍵」を手にしています。
何気ない言葉、偶然の出会い、心のひっかかり……。
それらはすべて、扉を開くヒントを秘めたサインなのかもしれません。

こうしてみるとタロットは、鍵そのものではなく、扉の存在を教えてくれる地図かもしれませんね。
そして、扉を開ける鍵は、いつだってあなた自身の中にあるのです。

次にカードを引くとき、もしかしたらあなたが求めていた“鍵”がそこに現れるかもしれません。
その鍵をどう使うか──それこそが、あなたの人生の魔法なのです。

今日もまた、あなたの手の中に、ひとつの小さな鍵があることを、どうぞ忘れないでいてください。

記事)小鳥遊

参考文献
『世界シンボル辞典』ハンス・ビーダーマン著
『タロット象徴辞典』井上教子著

『タロットの歴史』井上教子著
『シークレット・オブ・ザ・タロット』マーカス・カッツ/タリ・グッドウィン著 他    

\ 最新情報をチェック /

ZOOM-心の対話-

「話すこと」「心をひらくこと」を大切にしたセッションです。ご希望の場合には手相鑑定、タロットによる占断も行います。
あなたのお悩み、お話を御聞かせください。
【料金】:60分 11,000円(税込)/ 90分 16,500円(税込)延長15分ごと 2,750円(税込))