【象徴解釈Vol.42】犬の象徴 ― 境界を見守る忠誠の番人

人と犬の象徴史
犬という動物は、人類がもっとも早く家畜化した存在のひとつである。その歴史は旧石器時代にまでさかのぼり、人類が狩猟採集の生活を送っていたころから、人のそばにあった。日本でも縄文時代の遺跡から犬の骨が発見されており、既に家族や共同体の一員として扱われていたことがうかがえる。
このように古代から人と深く関わってきた犬は、単なる「動物」ではなく、文化や宗教、神話の中で様々な象徴性を帯びてきた。忠誠、番犬、死者の案内者、野性の残影。これらのイメージは時代や地域によって変容しつつも、根底には「人間との関係性」を映す鏡としての意味がある。
日本における文化・思想・神話による捉え方
日本において犬は、古代より霊的存在とされる側面と、身近な生活を支える動物としての側面の両方を併せ持つ。『日本書紀』や『古事記』には犬の明確な登場は少ないが、民間信仰や伝承の中では頻繁にその姿が確認される。たとえば「お犬さま」として崇敬されたのが、江戸時代の将軍・徳川綱吉による「生類憐みの令」である。この政策は極端に動物愛護を推し進めたもので、犬に対して保護を与えた一方で、政治的混乱も生じさせた。
また、神社において「狛犬」は、神域の守護者として設置される。
これは犬というより獅子に近いが、外敵や邪霊を追い払う存在として位置づけられ、「吽(うん)」と「阿(あ)」で対をなす象徴として用いられている。さらに「安産の守り神」として犬が信仰された事例も多く、特に妊婦が「戌の日」に帯祝いを行う習慣が今でも残っている。
(日本以外の)東洋文化・思想・神話による捉え方
中国では「狗(いぬ)」は十二支の一つ「戌」として位置づけられ、忠誠と正義の象徴とされる。儒教的価値観においては、家族に対する忠義や奉仕の心を象徴する存在である。また、風水では「犬」は北西の守護を担い、家を守る霊獣とされる。
中国の神話には「天狗」と呼ばれる存在があるが、日本の天狗とは異なり、狗(いぬ)に起源があるとする説もあり、天と地をつなぐ霊的媒介として扱われる場合もある。また、チベット仏教においては犬が輪廻における一時的な姿として扱われ、慈悲の対象となることも多い。
西洋の文化・思想・神話による捉え方
西洋では犬は古代より「死と再生」「守護」のシンボルとして広く用いられてきた。ギリシア神話においては、冥界の番犬ケルベロスが有名であり、ハーデスの支配する死者の世界の門番として三つの頭を持ち、出入りを厳重に管理する役割を担っている。

また、エジプト神話ではアヌビス神が犬あるいはジャッカルの頭を持ち、死者の魂を導き、ミイラ作りを司る神とされている。アヌビスは死後の審判に関わる神として、儀式と境界を象徴している。
中世キリスト教美術においても、犬は「忠誠」「貞節」の象徴として聖人や聖母の足元に描かれることが多く、とくに白い犬は純粋さや聖性を表していた。
象徴から読み解く犬 スピリチュアル メッセージ
犬は「境界を守る存在」である。物理的な境界(家や領地)だけでなく、心理的・霊的な境界線をも護る。忠誠、友情、警戒心、正義といったキーワードが浮かび、単なる従順さではなく、何を守り、何に吠えるべきかという「判断力」を内包する象徴である。従って、犬の象徴が示すのは、「誰に忠誠を誓うのか」「何を信じて守るのか」という問いでもある。
占断に用いる際の考察
タロットとの関連
「愚者」に登場する小さな白い犬は、無垢な旅立ちを守る霊的伴侶である。忠誠心と直感、危険への警告を象徴し、愚者の歩みを支える影の存在と解釈できる。
また「月」カードにも犬(と狼)が描かれ、本能と理性のバランス、無意識への探求、境界線の曖昧さが象徴されている。
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運気との関係
犬の象徴は主に「守護運」「人間関係運」「境界線の確立」に関連する。周囲との関係性において、誰を信じ、何から距離をとるかという運の流れに影響を与える。
夢分析に用いる例
夢に現れる犬は、単なる動物の象徴にとどまらず、自分の信頼・忠誠・境界意識を映し出す鏡である。どのような犬が、どのように現れたかによって、現在の人間関係や内面の課題が如実に反映されるため、犬の夢は「心の守り」と「つながり」に関する重要なサインであるといえる。
- 犬に追われる夢
自分の中にある抑え込んだ本能や怒り、あるいは外部の圧力に追い詰められている心理状態を示す。逃げているなら、まだ対処法を模索中。立ち向かうなら成長の兆し。 - 犬に噛まれる夢
信頼していた誰かからの裏切り、または自分自身の未熟な判断によって傷つく可能性を示唆する。痛みが強いほど、現実における心の傷が深い。 - 犬を飼う夢
人間関係において新たな信頼関係や守るべき存在が現れることを暗示する。飼う犬が小型犬であれば家庭的な安定、大型犬であれば社会的責任を表すこともある。 - 犬と遊ぶ夢
心の余裕や、人間関係の調和を表す。信頼できる誰かとの関係性が好転する予兆とされる。 - 死んだ犬が夢に出る
過去の信頼関係、あるいはかつて自分を支えてくれた価値観との決別、あるいは再評価の時期を意味する。感情的な整理が求められている。
信頼と境界の感性
犬は、人間社会における忠誠と守護の象徴であると同時に、野性を内に秘めた存在でもある。神話や伝承に登場する犬たちは、ただ人に従う存在ではなく、ときに境界の守護者として神秘と死の領域を往来する。
文化によっては、犬は吉兆の動物であり、神の使いであり、またあるときは地獄の門番でもある。その多面的な象徴性は、私たちに「信頼とは何か」「本能と理性の境界とは何か」といった問いを投げかけてくる。
現代の占いや夢分析においても、犬の登場はしばしば人間関係や自己の内面に関する示唆を含んでいる。誰を信じるか、自分の忠誠はどこにあるのか、どこまでが許容すべき境界なのか――犬という象徴は、そうした問いへの道標となってくれる。
記事)小鳥遊
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