【象徴解釈Vol.32】目の象徴―真実を見抜く力と心の鏡

視ること、それは知ること

私たちは、日々の世界を「目」で受け取っている。目に映る景色、色、表情、光と影。その一つひとつが、私たちの心に作用し、感情や記憶を呼び起こす。

古来より「目」は、単なる感覚器官ではなく、魂の窓、真実を見抜く器、神の視線などとして、あらゆる文化の中で特別な意味を持ってきた。それは、視ることが単なる情報の受容ではなく、「理解すること」や「悟ること」に通じるからだ。

この記事では、「目」が持つ象徴としての力を、日本・東洋・西洋の文化的背景から掘り下げ、そこに宿る意味を浮き彫りにしていく。夢や占断で「目」があらわれたとき、そこにどのようなメッセージが込められているのか――見えるものの奥にある、見えない真実に触れてみよう。

日本における文化・思想・神話による捉え方

日本において「目」は、真実を見抜く力、霊的な洞察、神仏とのつながりを象徴してきた。たとえば天照大神が天の岩戸に隠れた際、八咫鏡(やたのかがみ)に映る姿を見て外へ出たという神話は、「目」が神の姿を映す鏡として、自己を照らし出す装置でもあることを示している。

天岩戸神話の天照大御神(春斎年昌画、明治22年(1889年))

また、仏像の目には玉眼がはめ込まれることがあり、そこには「仏の目はすべてを見通す」といった信仰も含まれている。

民間信仰においても、だるまの目入れ儀式や、お札に描かれる目など、目は願いを託す場所、または霊力の通り道としての意味を担う。

日本以外の東洋文化・思想・神話による捉え方

中国文化では、「目」は精神や魂の宿る場所とされる。道教では、目を閉じて内観することを重視し、また中国医学では「肝は目に開竅する(目と肝はつながっている)」とされるように、感情や生命エネルギーと目は密接に関係している。

インド文化では、第三の目=アージュニャー・チャクラ(第六チャクラ)が「霊的な目」として認識されている。これにより、人間が肉眼で見えない真理や精神的実在を知覚することができるとされている。

西洋の文化・思想・神話による捉え方

西洋では、「目」は知覚・真理・神の視線の象徴とされてきた。ギリシア神話では、すべてを見通す巨人アルゴスの千の目、あるいは予言能力を持つ盲目の預言者テイレシアスのように、「見る」という行為そのものが神的な能力と結びついていた。

また、キリスト教美術における「プロビデンスの目(全能の目)」は、三角形の中に描かれる目として知られ、神が常に世界を見守っていることの象徴とされる。これにより、「目」はただの器官ではなく、道徳的・霊的な監視者として位置づけられた。

アーヘン大聖堂に施されたプロビデンスの目の装飾。下側にローマ数字で「MDCCLXVI」(1766年)と書かれている。

象徴から読み解く目 スピリチュアル メッセージ

「目」は、単に物理的な視力を示すものではなく、「真理を見通す洞察」「見守る力」「魂との接点」「霊性の窓」としての側面を持っている。

ときに私たちは「見たいものしか見ていない」ことがあるが、「目」の象徴は、意識を広げ、未知や真実を見極める力を呼び起こす。内なるビジョンを育てることもまた、「見る」力に含まれる。

占断に用いる例

タロットとの関連

「隠者」「正義」「月」「星」「太陽」「審判」などにおいて、目を閉じている/開いている描写が象徴的に使われる。特に「正義」では目隠しが真理への偏見なき視点、「隠者」では内なる目が真理への道を照らす。

運気との関係

目は「直感運」「洞察運」「対人運」に関与する。見抜く力、真実を見極める判断力、または人間関係における観察力としても重要。

夢分析に用いる例

目の象徴は、真理への扉である。現実を見るための目だけでなく、内なる真実を見抜く「心の目」も、人生を照らす大きな光となる。

  • 目が合う夢
    他者との精神的なつながり、理解、または対人関係の中での「気づき」を象徴する。
  • 第三の目が開く夢
    霊的覚醒や深い気づき、内なる真理に目覚めるサイン。
  • 大きな目に見つめられる夢
    道徳的な不安、または誰かに監視されているという感覚の象徴。
  • 目を見開く夢
    驚きや覚醒の象徴であり、新たな真実や感情に気づく予兆をあらわす。見落としていたことに光が当たる可能性がある。
  • 目が見えなくなる夢
    不安や現実逃避の心理状態、または「見たくない」「直視できない」感情を表す。混乱や迷いの象徴とも。
  • 誰かの目を見つめる夢
    その人物に対して強い関心や感情があることを示すほか、「その人の本心を知りたい」という潜在的な願望のあらわれ。
  • 目を洗う夢
    過去の偏見や誤解を洗い流し、物事を新たな視点で見ようとする姿勢の表れ。心の浄化を意味する場合もある。

目が語る、見えない真実

「目」は、単なる視覚の象徴ではない。
それは真実を映し出す鏡であり、感情や思考を覗き見る窓でもある。

日本の神話では、「天の岩戸」においてアマテラスの「見ること」が世界を照らす鍵となり、東洋思想では「内観」や「観想」の象徴として魂の探求と結びついてきた。西洋では「神の目」や「第三の目」として超越的な知性と直感を表す。

夢の中で「目」が現れるとき、それはしばしば「気づき」の瞬間、あるいは「盲点」に光が射すことを暗示する。目を開ける夢、見つめられる夢、目を洗う夢……その一つひとつに、魂の深層が語られている。

見えるものを信じるだけでなく、見えないものを感じ取ること。
「目」という象徴は、私たちにその静かな力を思い出させてくれる。

記事)小鳥遊

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